シニアネット仙台 東京日和・見
シニアのための市民ネットワーク仙台
Home

メニューマップ画像

連載「東京日和・見」C
 闘う絵本作家・田島征三さん

写真右が木村民子さん。
1997年、デンマークの高齢者集合
住宅を訪問した際に撮影

 木村民子さん(「高齢社会をよくする女性の会」運営委員)
【NEW】



 「ちからたろう」や「やぎのしずか」を描いた絵本作家の田島征三さんは、東京の日の出町に住んでいて、ごみ処分場建設反対運動の急先鋒だった。最近では映画「絵の中のぼくの村」(第46回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞)に双子の兄の田島征彦さんと一緒に出演していらっしゃった。

 私は田島さんに数回お会いしたことがある。初回はもう十数年も昔、近くの公立図書館主催の講演会だった。テーマは自作の絵本を語るということだったが、当時、田島さんは米軍基地反対闘争を支援していて、講演の途中でそのビラを撒き始めた。館長は慌てて、それを阻止しようとして田島さんと口論となり、講演中止を言い渡した。

 田島さんは激怒し、聴衆の何人かも抗議したが、結局講演中に政治活動?はしないということで妥協し、講演は続けられた。終了後、田島さんに賛同する人々は場所を変えて議論し、署名などを行った。むろん、私も高揚した気持ちで田島さんについていった一人だった。

 その後、育児雑誌のライターをしていた頃、私は絵本作家のインタビューを連載していたので、早速日の出村(当時はまだ町ではなかった)に田島さんを訪ねた。田島さんの家の前には、青々とした畑が広がり、「やぎのしずか」の主人公である山羊がのんびりと草を食んでいた。牧歌的なのどかな田園風景に、下町育ちの私は、同じ東京でもこんな暮らしがあるんだとうらやましく思ったものだった。

 近年、その日の出町にごみ処分場受け入れをめぐって、健康被害の不安を訴える住民と行政の対立が起こった。四月早々行われた町長選でも、この廃棄物処理場の安全性が争点となったが、建設推進派だった現職町長が再選され、反対派の女性候補は惜しくも落選した。東京版の新聞やテレビの報道番組などでは、このごみ処分場のニュースはよく取り上げられていて、田島さんが身を挺して抗議している姿も放映されていた。私はなつかしく、「よくがんばっているなあ」と感激し、ひそかにエールを送っていた。

 ところが、ある日新聞の片隅の小さな記事を見て驚いた。見出しは「病床で祈る処分場反対」。今、田島さんは一人、ガンと戦っている。胃の三分の二を切除し、経過はあまり思わしくない様子。「ごみ問題は山の中の小さな村で起きる。住民運動は暴力や圧力にねじ伏せられる」と話していた田島さんは、戦線から抜け、歯ぎしりする思いで病床に伏せっていることだろう。

 廃棄物処理に関して、環境汚染の懸念は強く、安全とは言い難い。都市部で大量に消費された結果の廃棄物が山中に捨てられ、住民の健康を害するとなれば、そこに住む人々は納得がいかないのは当たり前。私達はごみが自分の目の前からなくなれば、どこに捨てられようと無関心ではなかったか。田島さんの命を削ってしまったのは私達でもあるのだ。「田島さん、負けないで、負けないで」とせめて祈らずにはいられない。処分場反対の戦いにもガンにも。


木村民子さん略歴
 大学卒業後、出版社編集部(潮文社)勤務。現在、「高齢社会をよくする女性の会」運営委員等。「三井海上ライフデザインラボ」チーフディレクターを務めた。
 著書『私の一歩を始めたい』『女が素敵な子どもの本』
 


シニアのための市民ネットワーク仙台
仙台市青葉区一番町2ー5ー12 一番町中央ビル8階
Copyright(C) 1996-2000, Sendai Citizens' Network for Seniors
E-mail:info@sendai-senior.org