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デンヴァーの風  その18 あずきじるこ 秋山晃通


【日米シニア井戸端会議 関連特集】
 米国コロラド州デンヴァーの秋山晃通さん(73)からエッセー「デンヴァーの風」が届きました。秋山さんは、シニアネット仙台運営しているシニアのための電子メールコミュニケーション「日米シニア井戸端会議」に参加しています。エッセーは不定期で続きます。

 クリスマスツリーが裏庭に投げ出された。きょうは、私も、自分の部屋に飾ってあった造花のポインセチアや、キャンドルスタンドを、例年どうりにボール箱に入れながら、日本の年末を思い出した。

 娘婿夫婦、孫たちと私の趣向は違うので、私は、自分の部屋に携帯用のプロパンガスストーブを置いてある。毎日、就寝前に土鍋に、干し椎茸、出し昆布を漬けておいて、朝、讃岐うどん半人前と鳴門を二枚、鰹出汁をいれて煮る。食後は、緑茶やドリップコーヒーを味わうのが通例だが、たまには変わったものが欲しい。

 閃いた。「そうだ、小豆じるこを作ってみよう......」 その夜、二人前用の土鍋に、小豆を一合ほどに、ぬるま湯を8分目、ベーキングソーダを匙一杯と砂糖を一合ほどいれた。

 快晴が続くが寒気が厳しい。雪人形は少し崩れているが、枯れ木に見えるアスペンの枝先には、もう蕾の膨らみに気がつく。小窓から見える街路のクリスマス後の風情を楽しんでいると、早く、暖かい"おしるこ"を啜りたくなった。『ニンジャストーブ』を点火した。

 吹き零れないように、土鍋を見詰めること約30分、最初ボーボー、沸騰しだしたら、細火で、じっくりと時間をかける。出来上がり数分前に『赤穂の天然塩』を小匙に一杯いれると、香りは一段と広がる。その香りは狭い自室に充ちる。香気は、隣のおもちゃ専用部屋に流れこんでいた。小豆の柔軟度を知るため、小皿に大匙一杯いれて啜ったところを、5歳の孫娘が覗いていた。彼女は"おしるこ"を知らない。鍋の中の、黒く見える汁の沸騰を怪訝な顔で見ている。

 私は、「ジスイズ ヤミー レッツ トライ」と言ってから、ほんの少し小皿にいれて小さな手に持たせた。彼女は、おそるおそる啜った。「ヤミー!」小さな指で、オーマークサインを私に投げて部屋を出て行った。

 数分後、お姉ちゃんは、4歳の妹を連れて部屋に入って来た。二人の手には、大きめのお椀と匙と紙ナプキンが握られていた。
(続く)
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