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デンヴァーの風  その14 柿とカボチャ 秋山晃通


【日米シニア井戸端会議 関連特集】
 米国コロラド州デンヴァーの秋山晃通さん(73)からエッセー「デンヴァーの風」が届きました。秋山さんは、シニアネット仙台運営しているシニアのための電子メールコミュニケーション「日米シニア井戸端会議」に参加しています。エッセーは不定期で続きます。

   富有柿は、晩秋の山野がヒトとカラスとリスに与えてくれる味覚の王者と私は感じています。 ロサンジェルスのマーケット、フル−ツコーナーの一画には、大中小の富有柿が初秋から翌年初頭まで山積みになっていました。価格も安いので毎日のように戴きました。
カボチャ
 さて、コロラドで初めて秋を迎えましたが、なんと普段利用する有名マーケットに柿が積まれていません。車を駆って探しうろつきました。やっと、あるマーケットで見つけましたが、貴重品のように一個づつ、小指の頭ほどの青いレッテルが貼り付けてありました。
( ITO FUYU PERSIMON PRODUCE OF USA 4428 EAT LIKE AN APPLE)

 ひとつ約2ドルもしました。秋をあじわいたいので二つだけ選って自室でゆっくりと皮を剥きながら郷愁までも噛み締めました。地元で約四十年も暮らす日系おばさんに訊きましたら、ほとんどのコロラド米人は柿を食べないそうです。彼女は、渋柿を友人から譲り受けて、自宅でみごとな干し柿にしていました。そういえば私は、まだ、ここで柿の木を見たことがありません。一世、二世が日本から取り寄せたものが少しあるようです。米国は、州が違うと国が違うほどということを前回も書きましたが果物においても痛感しました。

 カルフォルニアでもコロラドでも、葡萄、オレンジ、レモン、キュウイ、リンゴ、バナナ、アボガド、パパイヤ、マンゴー、パイナップル、洋梨、ブルーベリー、苺、スモモ、などは一年中、安価で売られています。季節がやや限定のものでは杏(アンズ)、無花果(イチジク)、まくわ瓜、西瓜、メロン(日本の高級物はありません)といったところです。

 太平洋岸メキシコ北部が隣接しているので米国は、その恩恵を受けています。皆様、ご存知のようにメキシコは、労働力や土地の価格が安く気候温暖なので、野菜、果実、花の栽培なども大きな資源となってなっています。それを米国の商人は、見事に流通機構に乗せているようです。ここで、話題は、日本では秋の代表とする「栗カボチャ」にうつしたいと思います。

 私が、ロサンジェルスで暮らし始めた二十七年前のことから物語(事実の)は成り立ちますので、いろいろな野菜の話を織り込みながら記しますので、のんびりと読んでください。

 結論から述べますと、日本人の開拓精神の発露、実績を誇りたいものです。 ロサンジェルスに働きだしたころ、私は貧乏で夫婦共働きですから家事、育児一切も協働でした。むしろ、超健康な私のほうが弱い家内を助けるのが当然でしたから、家屋修理、台所掃除、庭手入れなど衣食の買い物にも気をつかい、特に食料購入には精通してしまいました。

 当時のキャベツは、現在と比べたら雲泥の差でした。とにかく葉が固くて味も悪いものでした。栗カボチャなど、ほとんどありませんでした。それが、約二十年前から、良い方に変化してきたのです。まず、キャベツがよくなりました。私は東京育ちですから、キャベツといえば群馬県嬬恋村(つまごいむら)のものが一番うまいと思っていましたから、それを基準にして味をもとめています。ある日、その味と舌触りが、日本のそれに近いことに驚きました。顧客に日系米人で農業を手広くやり大成功している人がいましたので訊きました。

 「それは、日系二世、三世と戦後一世の日本人の農業技術者が、メキシコで品種改良をしているからだよ!」
 それから、数年経過したころ、マーケットに栗カボチャが、春夏秋冬置かれていることに気がつきましたので、また、二世の南加農業成功者「比地次男」氏に訊きました。

 「カボチャもメキシコの土地に合うように研究し、しかも、一年中栽培させているのも、日系農家の指導努力の賜物だよ。そればかりか、数種の人参、数種のジャガイモ、従来のたまねぎ、ハワイ玉葱(サラダ用、薄甘味で美味)、サツマイモ(金時芋に、ほとんど近いもの)も、安価で大量に生産させて、今では、全米に配送されている。このわしが、オクスナード地区で栽培している「セロリー」は一番味がよい。これだけは、ここが適しているらしい...どこでも栽培できるが、味、舌触りは、わしのが一番だ!仲間がやった栗カボチャでは失敗談もある。聞いた話だが、はじめて栽培したとき、現場労働者はメキシカンで、カボチャなど食べたことがない連中だから、大きくして市場に出せば儲かるとおもったのか、スイカみたいに育ててしまったことがある」と、大笑いしていました。

 現在では、適当な大きさで、東洋人がいる市のマーケットで売られています。ロサンジェルスは、東洋人が多いから野菜コーナーには、白菜、大根、こかぶ、ちんげん菜、茸、えのき茸、シメジ茸、木耳、栗カボチャもつねに満載されていますが、デンヴァー界隈でも少ないが売れているようです。

 そのほか、水耕栽培では日本の胡瓜やトマトも業界の話題、課題になっています。長葱は改良がいまいちです。埼玉県草加特産の白身の長い柔らかく美味の草加葱などは気候風土より、寒風に曝されながらの土盛りの人手間を必要とするので将来も無理でしょう。

 山芋、牛蒡、蓮根は成功しています。青紫蘇、茗荷は味、香りがいま一つたりません。(ハロウイン用のカボチャは表皮も柔らかく、その日のためにだけ栽培されて食べません。)

 アメリカ生まれの娘も孫も、季節に関係なく、私の料理した栗カボチャは美味しいから、また作ってくれと言ってくれます。寿司はすっかり定着しましたが、豆腐料理を含めて日本食は米国人にすこしづつ浸透しています。

 一年中、栗カボチャと金時芋は売られていても、四十五歳まで日本で暮らした私などは、秋という季節を味わうために食べています。冬至に食べれば風邪をひかないなどという言葉とともに、甘いものに飢えていた時代に、台所で楽しそうに動く母や叔母を思い出すからです。

 あの濃緑ざらつく表皮は堅固で、厚手の支那包丁で体重をかけて切断するカボチャと、佐賀有田の陶工、酒井田柿右衛門のこころを捉えた晩秋の輝色を、キッチンの片隅に数日でも同居させることが、私の「新嘗祭」として、米国コロラド州で生きてゆくことでしょう。

★イチゴ、白い唐もろこし、豆腐、菊花、ベビーブレス、アバガド、ウニ、鮑、アサリ、ハマグリのことは改めて、より詳しく報告したいものです。
(続く)
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