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なんでもシネマ(56) 戦場という日常現在の日本で戦場を意識することはない。銃社会の米国で、銃乱射による事件が度々起きていても、それは戦場ではない。戦場が持つ、常に死と背中合わせの緊張感を”疑似体験”させる、怖い映画に出合った。今年の米アカデミー賞で作品・監督・脚本など6部門に輝いた「ハート・ロッカー」だ。2004年のイラクを舞台に、爆弾処理班の米軍兵3人の目を通して、戦場の過酷さをドキュメンタリー的に描き出した作品だ。 リーダーのジェームズ(ジェレミー・レナー)は、いざとなると防護服を脱ぎ捨てて爆弾処理を敢行し、砂漠で遭遇した銃撃戦では持久戦に耐えて生き延びる。彼には恐怖心がないのか? 彼の関心は爆弾処理だけに向かい、そこに「生」を感じる。任務を終えて帰国した彼が、居場所を求めて再び戦場に赴くラストは鮮烈だ。「戦争は麻薬である」という冒頭のテロップが、ここで意味を持つ。 キャスリン・ビグロー監督は機動性のある手持ちカメラを使い、戦場の緊迫感とザラつき感を淡々と描写する中で、戦争のヒロイズムと無意味さの両方をジワリ、ジワリと染み渡らせる。この作品がイランでの米軍を正当化するものだ、という批判にはびっくりだ。アカデミー賞の対抗馬は元夫、ジェームズ・キャメロン監督のSF大作「アバター」。3Dによる驚異の映像が話題になり、自身の「タイタニック」が持つ興行記録を塗り替えたが、技術部門のみでの受賞に終わった。地球から遠く離れた惑星で、人類は希少鉱物を狙って原住民を追い立てようとする。原住民と人間のDNAを掛け合わせた肉体に化身(アバター)して情報を探る元海兵隊員(サム・ワーシントン)は、原住民の娘と恋に落ちて惑星を救うために人類と戦うことに…。 惑星と原住民の斬新なシーンや設定は魅力的だが、戦闘はゲーム感覚でヒーローが最後には勝つ−では、戦場は絵空事でしかない。棺桶を意味する「ハート・ロッカー」が、荒っぽくとも人間の根源に否応なく迫っているのに比べれば、この勝敗は当然だろう。(直) ![]() |
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