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なんでもシネマ(54) 

オリジナルにこだわる


 クロサワ、といえば年配者は黒澤明をイメージするだろうが、若い世代は黒沢清(54)だろう。「CURE」、「回路」などのサイコスリラーで海外ではゴッドファーザー・オブ・ジャパニーズホラーとして支持され、近作「トウキョウソナタ」は08年カンヌ映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した。

 11月末に開かれた欧米以外の作品を取り上げる西仏・ナントの第31回三大陸映画祭が彼を特集、18作品を紹介した。監督も参加したトークを聞いたが、オリジナリティーにこだわる制作姿勢が印象的だった。

 というのも、2009年も前年に続き邦画が好調だったが、内実はTVドラマやコミックの焼き直しが主流だからだ。1980年代以降、撮影所システムが崩壊、シナリオを練り上げる基盤を失ってからは、この傾向が続く。かのハリウッドも同じ状況で、より深刻だ。

 トークの発言から拾ってみた。

 彼がスタート切ったピンク映画の現場は「自分の好きなものを実験的につくることができた自由な場」だったという。オリジナリティーにこだわり、ジャンルの枠をたやすく越える。ネットを介して「あの世」と現世の境界が崩れる恐怖を描いた「回路」(2000年)と、無気力に生きる青年の小さな変化を扱った作家性のある「アカルイミライ」(02年)とでは連続性がないようだが、監督にすれば「一から自分で考えたところは共通」ということになる。

 「回路」では幽霊が見え、「あの世」に取り込まれた者は消えていく。「カメラは存在しているものを撮る、という原理を突き詰めれば、写っていることは現実だ。途方もない出来事を堂々と見せることが映画なんだ」。そして個人と「国」さらには「世界」が対立した場合、現実なら個人が負けるが、映画では逆で構わない−と語る。ただ「相手の世界が1つ、という想定は01年以降、たくさんのものが複雑に絡み合い、変化し続けている、という考えに変わってきた」そうだ。映画の原点にこだわり、考えを突き詰める、それが邦画の地平線を拓いてきたのだろう。(直)
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