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ヘストンの死


 米国俳優チャールトン・ヘストンが4月5日、83歳で亡くなった。「ベン・ハー」(1959年、ウィリアム・ワイラー監督)や「十戒」(56年、セシル・B・デミル監督)など、1950年代のハリウッドが、新たに登場したテレビに対抗して製作した大型スペクタクル史劇に欠かせぬスターだった。

  「ミケランジェロの彫刻みたい」(デミル監督)と評された、端正で意志の強いマスクと鍛えられた肉体は、歴史的な英雄にピッタリ重なった。それだけに演技をほめられることは少なかったが、評論家の川本三郎さんは「史劇だけのスターとして語るのは正しくない。ただ者ではなかった」と追悼する。

 「ウィル・ペニー」(67年、トム・グリース監督)では時代の中で追いやられていく初老のカウボーイを地味ながら味わい深く演じ、「大いなる西部」(58年、ワイラー監督)でもグレゴリー・ペックの優男ぶりに対し、牧童頭を武骨に演じて存在感があった。

 彼は大学で演劇を専攻、兵役を経た後、映画デビューまでは舞台に立っていた。SFに新境地を開いた「猿の惑星」(68年、フランクリン・F・シャフナー監督)では猿に捕らわれ、大半が半裸姿。肉体を誇示するためだけの起用では、という感想も聞かれた。だがラストで、高慢な人間の末路を知って泣きくずれる姿は、誰でもが演じ切れたとは思えないのだが…。  晩年のヘストンは、マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォア・コロンバイン」(2002年)で”銃規制反対派の象徴”イメージが強烈だが、本領はあくまでも俳優だ。

 遺作の「マイ・ファーザー」(03年、イタリア・ブラジルなど合作、エジディオ・エローニコ監督)は、アルツハイマー症を告白した後での出演。ナチス強制収容所で生体実験行った医師メンゲレを父に持つ青年の心の葛藤を、実話に基づいて描いたもので、彼はメンゲレを演じて鬼気迫るものがあった。最期まで誠実に演じ続けたのだ。(直)
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