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なんでもシネマ(42) 

ドキュメントとの境目


 映画はフィクションとドキュメンタリーに大別されるが、その境界は限りなく無くなってきたのではないか。昨年10月開催の山形国際ドキュメンタリー映画祭、11月末の西仏・ナントで開かれた3大陸映画祭を訪れて、その思いを強くした。

 アジア、アフリカ、中南米の3大陸に絞った作品だけを提供し続ける3大陸映画祭は、03年から始めたドキュメンタリー部門をフィクション部門に統合させた。その最初のグランプリがドキュメンタリーだったことは象徴的だ。

 グランプリの「罪と罰」(中国、ツァオ・リャン監督)は北朝鮮と中国の国境地帯にある駐在所の中国人警備員の日々を描き、カメラは取り調べ中の暴力も克明に映し出す。視点の確かさと、映像の迫力が評価されての受賞だ。

 日本の「選挙」(想田和弘監督)は惜しくも賞を逸した。04年秋の参院選と同時実施の川崎市議補選で、素人の挑戦ぶりをとらえたドキュメンタリー。政策よりも連呼、組織へのあいさつが優先される日本型選挙の舞台裏を生々しくも滑稽に描き出し、痛烈な日本批判になっていた。だが、核心となる立候補の真意に踏み込まなかったのは残念だった。

 準グランプリの「Bunny Chow」は3人のコメディアンらを中心に、南アフリカ的”ない交ぜ”の生きざまを見せつけていく。3人が本物のコメディアンだけに、演技なのか地なのか、まさに境界の作品。乗りのいい会話、そして明るい音楽で楽しませた。

 現代の精神病治療が抱える問題点を鋭く突き、「新しい視点」賞とナント市賞をダブル受賞した「精神錯乱」(チュニジア、ジャイビ・ファデル監督)はドキュメンタリーかと思わせる作風だ。医師の独善的な治療で追い込まれる若い患者役の真に迫った演技と、克明に映し出すカメラがすさまじかった。

 本来、フィクションもドキュメンタリーも人間や社会を描き出す手法。だとすれば区分けなど無意味なのかもしれない。(直)
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