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なんでもシネマ(31)

ほろ苦い笑い


 街の真ん中の映画館がまた1つ姿を消した。仙台東宝劇場だ。昭和38年の開場というから43年の歴史に幕を閉じたことになる。

 最終日の2月26日、「THE有頂天ホテル」(三谷幸喜監督)を見た。多くの人たちに夢を与えてきた劇場だけに、最終日は込んでいるかと思ったら、客はまばら。何とも寂しいことだと思いながら、上映が終わって出てみると、改札前には人の列ができていた。

 最終上映作は「有頂天…」でなく「ALWAYS 三丁目の夕日」(山崎貴監督)だった。昭和30年代の“日本らしい日本”の風景(舞台となった昭和33年は映画入場者が11億人を超え、統計史上最高)を描いた作品の方が、消えゆく劇場への思いを表すものとしては、ふさわしかったのかもしれない。

 「三丁目…」は漫画を原作に、今やその時代を知っている人はいても、風景はどこにも残っていない昭和30年代をミニチュアとCGで復活させた。だが光景だけでなく、家族や隣人が気持ちを通わせる路地裏のコミュニティが存在したことを教えてくれる。この映画のヒットはノスタルジーだけではあるまい。現代の競争世界による歪みを映し出す鏡となっていた点も見逃せないだろう。

 一方の「有頂天…」は「ラヂオの時間」(97年)「みんなのいえ」(01年)に続く三谷監督の第3作。今回も緻密な構成と伏線に、笑いと涙が織り込まれていて楽しめる。題名はフレッド・アステアのミュージカル「有頂天時代」(36年)と豪華キャストのホテル映画「グランド・ホテル」(32年)を組み合わせたものだという。

 日常のようで日常ではない異空間、ホテルを舞台に大晦日に集まった「訳あり宿泊客」たちとホテルマンらとの人生が交錯する中、最悪の展開から最後は各人が生きる希望を取り戻す。ここにはちょっとした偶然ややる気が人生を変える妙味はあっても、本来の人が支え合う路地裏のコミュニティは存在しない。今の時代を映し込んだ分だけ、笑いはほろ苦くもある。(直)
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