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なんでもシネマ(29)

歌って踊って


 ミュージカル映画の楽しみは、口ずさめる曲に華やかな踊り、そして大半はコミカルで見終わって幸福感に浸れることだろう。代表は戦前から1950年代にかけてのハリウッド、それもMGMミュージカルだろう。例えばジーン・ケリーの「踊る大紐育」(49年)「雨に唄えば」(52年)、フレッド・アステアの「トップ・ハット」(35年)「バンド・ワゴン」(53年)などだ。

 そんな優雅で絵空事の世界を吹っ飛ばしたのが、9月14日亡くなったロバート・ワイズ監督(91)の「ウエスト・サイド物語」(61年)。ニューヨークの下町を舞台に、人種の違いによる若者の抗争と、その中で芽生える恋と悲劇を描いたものだったが、導入部の俯瞰の構図、ダイナミックなダンスとスピーディーな展開が当時の若者を虜にした。立ち見をいとわず何度も見た記憶がある。

 「ウエスト」は吹き替えだったが、歌にも人材を得たのが「サウンド・オブ・ミュージック」(64年)。ジュリー・アンドリュースはまさにはまり役で、その歌声には心が洗われる思いだった。ワイズは、この2作品でともにアカデミー作品・監督賞を獲得した。

 最近のアメリカ・ミュージカルは大掛かりで華やかだ。「シカゴ」(02年)は俳優の個性を生かした3人の男女の駆け引きに魅せられた。「オペラ座の怪人」(04年)はCG(コンピューターグラフィックス)を使った劇場場面には息をのまされたが、主軸の男女3人の心理描写がやや希薄だった。

 ヨーロッパでは、ジャック・ドゥミ監督(フランス)とミッシェル・ルグランのコンビによる「シェルブールの雨傘」(63年)「ロシュフォールの恋人たち」(66年)が魅力的だ。ハリウッドとはひと味違う幸福感を満喫させてくれる。今年はドゥミ監督没後15年。彼のファンタジーミュージカル「ロバと王女」(70年)がデジタルリニューマスター版で上映される。フランスの上質なスターが勢ぞろいし色彩あふれるこの作品、仙台でも上映されるとうれしいのだが…。(直)
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