なんでもシネマ
シニアのための市民ネットワーク仙台
Home

メニューマップ画像

なんでもシネマ(28)

幻想の魔術師


 それ自体は動かない人形や絵を少しずつ変化させてコマ撮りし、連続映写すると動いているように見える。アニメーションとは、まさに語源どおり「生命を吹きこむこと」だ。

 世界的なアニメ生産国、日本の主流は、透明なセルロイド板に動画を描くセルアニメ。20世紀初頭に考案された技法で、背景と動画を区別できるため、流れ作業による分業を可能にし、アニメを飛躍的に発展させた。ディズニー、宮崎駿らの作品がそうだ。  だが、世界は広い。チェコのカレル・ゼマン(1911−89)は、CGなどのない時代に、アイデアと演出で独自の幻想世界を創り出した。

 彼の真骨頂は、実写とミニチュアセットを合成して、画面全体を銅版画調に統一させた長編特撮作品群だろう。代表作の「悪魔の発明」(1958年)「ほら男爵の冒険」(61年)「彗星に乗って」(70年)などが最近、DVD化されたので見直した。

 平面的ながら奥行きがある、不思議な空間は、一種「だまし絵」の世界。ジュール・ヴェルヌらを原作としながら、単なる冒険物語でなく、人間への深い考察を含んだ大人のおとぎ話になっている。

 例えば「彗星に乗って」は19世紀末の仏領アルジェリアが舞台。仏軍の若い中尉は町で見かけた絵葉書の美女に一目ぼれ。誤って海に落ちたら、何とその美女に助けられる。仏とスペイン、地元勢力などが争う中、接近してきた彗星に全員が吸い上げられる。彗星が火星に衝突しそうになって、人々は争いの無意味さ知って仲良くなるが、その事態が回避されるとなると、再び争い始める。

 実は物語全体が、海に転落した中尉の「一瞬の夢」だったのだ。「悪魔−」では科学至上主義への警告という苦みを含むが、「ほら男爵−」でのユーモアも忘れられない。

 CG世代には、リアリティーや科学考証などが不満かもしれないが、ここには確かに、一筋縄ではない人間が生きている。(直)
シニアのための市民ネットワーク仙台
仙台市青葉区一番町2ー5ー12 一番町中央ビル8階
Copyright(C) 1996-2000, Sendai Citizens' Network for Seniors
E-mail:info@sendai-senior.org