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なんでもシネマ(25)

絵はなぜ描く


 青いターバンに真珠の耳飾り姿の少女が、つぶらな瞳を向け、軽く口を開いている。今にも語りかけてきそう。17世紀オランダの画家フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」(45×40cm)だ。本物を見て一層虜(とりこ)になったが、彼はなぜ描き、少女は誰か、の疑問は解けない。

 P・ウェーバー「真珠の耳飾りの少女」(03年)は、名作には秘められた 愛があった、とする。画家は使用人の少女の優れた色彩感覚に気付き、創作意欲がわく。2人は引かれ合い、画家は少女の絵を完成させるが、妻は嫉妬…。

 複雑な心の機微を官能的に演じた少女役のスカーレット・ヨハンソンが出色。  光を重視したフェルメールの世界が余すところなく描き出されているのも魅力だ。

 J・リヴェット「美しき諍(いさか)い女」(91年)は、妻をモデルにしながら破棄した題材を、若い女に出会うことで10年ぶりに再挑戦する老画家の話。モデル役のエマニュエル・ベアールは大半がヌード。「肉体を脱ぎ骨格だけに」と迫る画家に「絵の真実は」と問うモデル。モデルと画家の心の合体への過程がみもの。絵は完成するが、画商の前に提示されたのは別の作品。幕切れは「絵に言葉はいらない」という画家に、画商が「数字の話を」と言ってすり寄る。4時間近い長編だが、何度見ても考えさせられる。

 シュールなメキシコ女流画家の波乱に富んだ47年を描いたJ・テイモア「フリーダ」(02年)は鮮烈だ。事故の後遺症、大物画家である夫の浮気、流産など、どれも「私でいること」だけのために描き続ける彼女を止められなかった。サルマ・ハエックは彼女に共感、乗り移ったかのような演技だった。

 古い作品ではV・ミネリ「炎の人ゴッホ」(56年)とモジリアニを描いたJ・ベッケル「モンパルナスの灯」(58年)が印象的。特に後者は、画家と画商を対極させ、作品とは何かを問い掛ける。夭折の貴公子ジェラール・フィリップの気品、妻A・エーメの清純さ、冷酷な画商R・ヴァンチュラの存在感が忘れられない。どの作品も画家の描きたいという情熱の深さを伝えていた。(直)
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