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なんでもシネマ(23)

「音楽の持つ力」


 「何か、いいんでねェー」。山形の片田舎の女子高校生が、補習をサボるために挑戦したジャズバンド、何とかスウィングできる音が出たときの主人公の言葉だ。矢口史靖監督の「スウィングガールズ」が盛況だ。

 NHK連続ドラマ「てるてる家族」に出演していた上野樹里をはじめメンバー16人全員が楽器に素人だった、というから驚く。

 彼女たち、3カ月たった時点ではどうしようもなく、監督もプロを交ぜようか−と思ったそうだ。だが、昼は撮影、夜は楽器練習をこなすうちに役者意識も芽生え、上達したという。成長過程をコミカルにまとめ上げた。

 矢口監督は、男子高校生のシンクロナイズ奮闘記「ウォーターボーイズ」もそうだが、独特なユーモアセンスが光る。高畠町など山形の風景、意表を突く米沢弁が、虚構でいて実際ありそうな”日常”をつくり出し、音楽の「作る楽しみ、味わう喜び」を、さらりと描き出す。見る者は、すぐ引き込まれる。

 音楽をテーマにした作品は多い。リストラの不安の中、ブラスバンドで英国一を目指す炭鉱労働者の姿に喝采を送りたくなる「ブラス!」(96年、M・ハーマン監督)。「陽のあたる教室」(95年、S・ヘレク監督)は、生徒たちに情熱とひたむきさで向き合う音楽教師の姿がまぶしい。父親の英才教育に反発、才能を生かし切れないまま精神を病んだ青年が、理解する女性に出会って才能を開花させる、実在ピアニストがモデルの「シャイン」(95年、S・ヒックス監督)は、主演ジェフリー・ラッシュの演技が光る。

 キューバの忘れられた音楽家を訪ねるドキュメンタリー「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(99年、V・ヴェンダース監督)は、人生と音楽の奥深さを感じさせて、胸の奥がうずいた。若い人には「8Mile」(02年、C・ハンソン監督)だろうか。人気ラッパー、エミネンが、自らの半生を演じた。好きなものへの一途さを、今の若者が持っていることを知るのはうれしい。(直)
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