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なんでもシネマ(14)

レスリー・チャンの死


 香港の人気俳優で歌手でもあるレスリー・チャンが4月1日夜、香港のホテルで自殺した。46歳だった。地元紙は、ゲイであることを公表していた彼が、別の男性とホテルに入る"恋人"を目撃した直後に飛び降りた−と報じたが、本当の動機は分からない。

 彼は1980年代後半に「男たちの挽歌」「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」でアイドルとなるが、男すらも魅入らせるほどの艶やかさが現れるのは、90年代に入ってからだ。ウォン・カーウァイ監督の「欲望の翼」「ブエノスアイレス」、チェン・カイコー監督の「さらば、わが愛/覇王別姫」「花の影」などが代表作だろう。

 ここでのレスリーは、ジャッキー・チェンやジェット・リーらの力強い正義漢という香港映画スターの歯切れの良さとは無縁だ。 映画評論家の暉峻創三さんは、それを「曖昧さ、複雑さ」だという。男女間や性の嗜好での曖昧さ、それに善悪を簡単に分けられない複雑さ。それらを内包したキャラクターを彼ほどに演じ切れた者はいなかった、と。

 東京国際映画祭での「さらば−」上映で来日した彼は、「男女の愛じゃないものを初めて表現するのに苦労した」とインタビューに答えている。京劇の中での男役・女役を超えた恋心は、悲劇的な幕切れをもたらすが、その真っ直ぐさに素直に涙することができた。 だが、俳優の隠れた気質に役柄を合わせていくウォン・カーウァイ監督と組んだ「ブエノスアイレス」では、その恋心は「敗北に伴う痛々しさ」(暉峻さん)になっていた。

 監督によって自分をさらけ出されても演じ続けた彼は、さらに自分の奥底を探ろうとしたのだろうか。遺作の「カルマ」は、精神科医の彼が、患者の混沌に引きずりこまれてビルの屋上に立つ−というものだった。
(直)


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