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なんでもシネマ(8)

山形でロケラッシュ


 6年前、西フランスの古都ナントで開かれた「3大陸映画祭」でベトナム映画 「ニャム」(NHK共同製作)を見た。都市化の波が次第に迫っているベトナム の農村を舞台に、17歳の少年ニャムの成長を描いたものだった。

 たまたまダン・ニャット・ミン監督と隣り合わせたら、美しい田園風景が広が る場面で「日本の農村も、こうなんでしょう?」と話し掛けられた。「いや、こ んな風景は、日本でも少なくなりましたよ」と返事をしたら、納得がいかないよ うな表情をされた。

 こんなことを思い出したのは、10年ぶりの転勤で4月から山形市で暮らし始 めたからだ。例年より2週間も早く桜前線は通過していったが、周囲の山々は芽 吹きで輝きを増している。山形市を出て月山を抱える西川町などに向かうと、” 日本の原風景”が眼前に広がる。

 実はこの自然に恵まれた山形県内で、映画のロケ(屋外撮影)が相次いでい る。4月までに4作品が撮影を開始、今夏以降さらに2作品がロケを行う予定 だ。

 どうして山形なのか。鶴岡市出身の故藤沢周平さん原作の「たそがれ清兵衛」 (山田洋次監督)と「蝉(せみ)しぐれ」(黒土三男監督)、作家の故外村繁さ んと山形市蔵王町出身の妻の夫婦愛を描く「日を愛(かな)しむ」(深尾道典監 督)は、いわば地縁。

 姥(うば)捨て伝説を基に、誇り高く生きる老人を描く「蕨野行(わらびのこ う)」(恩地日出夫監督)や若者のコメ作りがテーマの「アルカディア」(斎藤 耕一監督)は、山形の風土が作品イメージと一致したようだ。

 映画の撮影にはロケとは別に、スタジオ内のセットを使ったものがある。例え ば、時代劇に登場する江戸の町は、京都の東映太秦撮影所にあるセットが欠かせ ない。ただセットには薄っぺらさがつきまとう。それを嫌った故黒澤明監督は、 タンスや押し入れの内部にまでこだわった。

 セットの成功例、例えば1945年完成の「天井桟敷の人々」。マルセル・カ ルネ監督はドイツ軍の占領にも負けず南仏に巨大なセットを造って撮影を続行し た。人間の感情がいかに人生を変えていくかを群像劇で描き出して、いまだに色 あせない作品だ。

 既存のセットを活用できないケースでは、ロケの方が安上がりだろう。不況下 で企業の支援も難しい時期だけに、独立系の芸術作品などは、ロケにふさわしい 風景とともに地元の支援がないと実現はおぼつかないだろう。山形での6作品の ロケが、最近元気な日本映画を、さらに後押しする力になることを期待したい。 (直)


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