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なんでもシネマ(5)

車も大事な役者


 映画が20世紀最大の娯楽だとすれば、自動車は、この世紀の社会生活を良く も悪くも大きく変えた存在だろう。人々の行動範囲を広げ、産業をもり立てる一 方で、人間の時を”盗み”、地球環境の悪化に拍車をかけた。だが車との縁は、 映画もそうだが、切ることはできそうもない。

 古いスポーツカーを手に入れて乗り始めた。パワーステアリングはなく、クラ ッチも重い。他人には「動くアスレチック」と自嘲気味に話すが、実はそれを楽 しんでいる。車は動かすものだとあらためて実感させてくれるから。

 映画の中でも車の存在は欠かせない。すぐ思いつくのはカーチェイス(追跡 劇)だろうか。

 フランスの監督、リュック・ベッソンが制作した「TAXI」(1997年) 「TAXI2」(2000年)は、その代表作だ。

 タクシーなのに、一大事ではF1に変身するフランス車プジョーが大活躍。第 1作ではドイツ車、第2作では日本車を破り、愛国心も刺激してフランスで大ヒ ット。何でもコンピューターグラフィック(CG)処理される昨今だが、両作品 は実写なのもうれしい。

 異色なのはカナダ映画の「クラッシュ」(1996年、クローネンバーグ監 督)。頑丈を売り物にする北欧車を例外に、欧米の有名車が次々と実際に壊され た。描かれるのは車の衝突(クラッシュ)と自己破壊の中でしかセックスの快楽 を得られない人たち。

 カンヌ映画祭で審査員特別賞を得たが、人間性の否定だ、いや現代テクノロジ ーの塊、車の破壊を通して人間の存在を問うものだ、と賛否が割れた。今見直す と、現代に癒されない人間の哀しみが伝わってくる。

 邦画では石原裕次郎の「憎いあンちくしょう」(1962年)を挙げておこ う。スポーツカーを乗り回すスター(裕次郎)は、秘書との長すぎる愛に虚しさ を感じ、九州の無医村で働く医師にジープを贈ろうとする恋人に代わって搬送を 引き受ける。この美談にマスコミも殺到。途中のトラブルや行き違いなどをテン ポ良く処理した蔵原惟繕監督の手腕、裕次郎の若々しい演技はもちろん、”純 愛”が実はどんなものだったか、意味深な幕切れ、と見所は多い。 (直)


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